市議会 企業消防委員会 気仙沼市、陸前高田市視察報告 

平成29年度 静岡市議会 企業消防委員会 管外視察 報告書

平成29年8月12日

企業消防委員会

委員長 畑田 響

 

1 視察先  宮城県 気仙沼市(8月8日・雨)、岩手県 陸前高田市(8月9日・曇り一時小雨)、

埼玉県春日部市 国土交通省 首都圏外郭放水路(8月10日・曇り)

 

2 視察議員 石井副委員長、遠藤委員、繁田委員、中山委員、堀委員、望月賢委員、山本委員

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3 目的   企業消防委員会が所管する上下水道事業ならびに消防事業に関して、平成23年3月11

日に発生した東日本大震災からの復興の経過や課題などを調査し、また人口減少時代で

の持続可能な行政機能を維持するために必要なことを探るため、気仙沼市、陸前高田市を

視察するとともに、豪雨災害に大きく寄与する首都圏外郭放水路を視察するもの。

 

4 対応者 気仙沼市 赤川郁夫副市長、ガス水道部 小野寺部長、三浦管理課長、小野寺施設整備課長

兼工務課長、建設部下水道課 村上課長、議会義務局 鈴木事務局長

陸前高田市 伊藤明彦議長、平消防長、村上消防次長、消防団 大坂副団長、佐藤一男

消防団本部長

首都圏外郭放水路 施設案内職員

 

5 訪問概要ならびに本市への反映すべき点

 

1)気仙沼市

1214名の方がお亡くなりになり219名の方が未だに行方不明の甚大な被害となった。人口も74000人いたが、平成29年3月には8700人減って65000人。津波による浸水は、市域の5.6%で事業所の約80%が被災した。気仙沼市は、港を中心に海産加工業も多かった。沿岸にあった終末処理場も浸水した。震災直後の状態は、被害状況の把握、次に、大丈夫だった地域の排水を行った。震災時より、市長からも水産加工場の復旧を優先するようにとの大命題と指示があった。下水について復旧は、まず、マンホールに固形塩素を吊るし、減菌処理を行い海に放流させた。次に、仮設汚水処理施設を生活系が3カ所、水産加工場系が3カ所で計6か所設置した。(費用は1カ所につき1億円から1億5千万円。処理能力は50㎥/日から2000㎥/日)。生活系の仮設汚水処理施設については、幹線マンホールに近いこと、電力の供給、周辺が冠水していないこと、住居との距離があることなどが条件で、テント式にして景観保護と臭気対策も行った。漁業者から海での水質の悪化を心配されたが、震災前の5年平均と震災後9か月後の測定値(大腸菌群数、浮遊物質量、化学的酸素要求量等)で比較して差が出ていない。

終末処理場は浸水で機能が停止していたが平成26年11月に復旧した。現在、盛り土工事などをしているが、下水道管などがその盛り土の重量で損壊することもあり、盛り土工事が終わってからとなる。また、1つの箇所で例えば、国の三陸沿岸道路、市の街路事業、県の港災害復旧事業、県の臨港道路復旧事業など、国、県、市で各事業が同時並行で行われるため、その調整に労力がさかれる。

上下水道事業は市民のライフラインなので、震災後引き続き、その事業が継続できるが、その他の部署は避難所運営などその他の業務をすることとなる。

ここまでが、主に下水に関してであり、次に水道について。94.6%の24409戸が断水し、3か月後に通水した。施設では、2水道事務所と2取水場が全壊、3浄水施設が一部損壊、19配水場が全壊または半壊。管路では、231件が破断や漏水した。平成28年度末で実施計画延長163kmに対して、施工延長(実施中を含む)104.4kmで進捗率が64%。水道の復興に従事する水道の施設整備課には18名がいるが、市職員は4名で残りの14名が全国からの派遣職員。水道の復興工事も、下水道と同じく、各種土基盤整備の完了に水道施設整備が支障にならないように行っている。

赤川副市長さんからは、「5月で復興住宅が完成し、順次、小学校が通常の状態で使えるようにしている。3年後の平成32年までは国が復興期間としていて、計画を定めている。」とのこと。

気仙沼市には、静岡市は震災直後から保健師、保育士が約100名支援活動を行い、平成24年7月から戸籍業務に事務職を復旧復興に土木職を長期派遣しており、視察時には駿河区から派遣された青木さんが気仙沼市市民課にいて、激励を行うとともに、上司の市民課長も同席いただき業務について様子を拝聴した。静岡市にも29年7月時点で気仙沼市から23名の方が避難をされている。

静岡市では、気仙沼市との間で水産関係など昔から経済的にも様々なつながりがある。現在でも継続する被災地支援活動を戸籍部門だけではなく、上下水道事業でも情報交換することは意義あると考える。気仙沼市では、仮設汚水処理施設を6か所設けたが、静岡市が同じく市街地で大きな被害を出したときには、相当数の仮設汚水処理施設を設けることとなり、莫大な費用がかかると想定される。気仙沼市は、津波で漁港や水産関連施設が壊滅的な被害を受けたことから、市の主力産業の水産関連施設の復旧を最優先したが、静岡市も、その被害状況を踏まえて、復旧復興の優先順位をつける必要があり、水産関連はあくまで気仙沼市のことであり、一概に言えない。ただし、下水道が大きく被害を受けたときに、まずは固形塩素を導入したことから、この方法は参考になるのではないか。

2)陸前高田市

1602名の方がお亡くなりになり203名の方が未だに行方不明の甚大な被害となった。99.5%の住宅が一部損壊以上の被害。当時、消防職員は33名で、消防団員は749名。消防職員が1名、団員が34名も殉職された。現在の消防団員は643名(29年4月)。人口は20039人(28年4月)。消防団は、水門の閉鎖、避難誘導、避難所の設置確認、毛布等の支援物資の輸送などを行った。翌日には、重機を使い、国道のけい開(車を通れるようにすること)活動を行ったり、ガソリンスタンドに行きガソリンを集めたりした。平成24年に地震災害活動マニュアルを策定し、退避基準を設けた。デジタル無線機を個人に配備した。消防署は、3月23日に仮設消防署を設け、3年8か月も仮設で業務を行い、現在の新庁舎ができた。消防団員の確保は、街並みが現在編成途中であり、住所が定まっていない中なので、今後、再編が必要とのこと。ただ、人口の3%も団員がいることから、その維持に努めたいとのこと。(静岡市は定数が2950名で、定数が充足しても0.4%)

自衛隊が主導して、消防、警察との3者での合同訓練により、情報の共有が図れた。

同席いただいた消防団副団長の方は当時、竹駒地区の分団で水門の確認に3名が行き、閉鎖をした。その後、3日間は地域での交通の誘導を優先し、救助活動は行わなかったことが残念だったと副団長が述べた。ほとんどがプロパンガスを使っていて、それを煮炊き用に使った。震災数日後には、プリウスが出火した。震災後には、消防団員の親が、周りの団員に殉職した方もいて、子どもを団員にしたがらなかったが、今ではその傾向が無くなってきた。

静岡市では、地震災害活動における消防団員のマニュアルはあると思うが、その周知はかならずしも徹底されていないと思う。津波浸水が想定される沿岸部では、その周知並びに訓練をより徹底すべきだではないか。消防団の方が「消防団は人づくり活動でもある」という。陸前高田市では、人口の3%もの団員がいるのは、こうした地域への貢献の意識が土壌にあるのではないか。静岡市も、シティズンシップ教育を掲げているが、この消防団活動を知ってもらうこと、消防団を中核とした地域防災力の充実強化法」が成立した背景からも、地域防災力をアップさせるため、団員以外の市民の方に何らかの形で地域防災活動に参加をしてもらうことが、必要だ。

3)首都圏外郭放水路

埼玉県東部を流れる中川・綾瀬川流域の浸水被害を軽減するために、洪水を地下50mを貫く総延長6.3kmのトンネルに取り込み江戸川に流す世界最大級の地下放水路である。平成5年に着手し、13年かかった。最大で毎秒200㎥の洪水を流すことができる。これまでに105回使用されてきた。最大だったのは、平成27年の台風時で1900㎥(東京ドーム15杯分)。今回、視察したのは、庄和排水機場の地下にある調圧水槽で、この調圧水槽は長さ177m、幅78m、高さ18m。管理は国交省関東地方整備局江戸川河川事務所。

この放水路では、一般見学会を行い、1日に100名程度来場する。放水路の機能を映像や模型で紹介した展示をはじめ周辺を多目的広場、親水護岸、サイクリングロードとして整備し、地域文化資産を目指している。静岡市でも、七夕豪雨を後世に伝える「かわなび」や工事を行っている下川原の貯留管、さらに小学校等各地にある貯留施設の意義について、市民にわかりやすく知ってもらう広報に努める必要がある。